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おじいさんやおばあさんと おしゃべりをしていたら

あっと言う間に 太い道の終点につきました
 

左へ曲がると北の町 右へ曲がると南の町

ハンドルを右に切って 南の町へ向かいます
 

南の町と言うのは この半島の一番南にある大きな町のこと

この辺の地の人は 下の町と言ったりもするそうです
 

北の町というのは 南の町のちょっと北にある町のこと

この辺の人は 上の町と言ったりします
 

どちらの町も うちのお店から見たら南の町なんですが

郷に入っては郷に従え と言うことで地の呼び方で呼んでいます
 

「南の町のどの辺ですか?」

南の町の近くまで来たところで おじいさんとおばあさんに声をかけました
 

「ああ、そこらで降ろしてくれればそれで。なあ、ばあさん」

「ええ、入り口で十分ですよ」
 

おじいさんとおばあさんが 口々にそう言いました

奥まで送っていっても そう大した手間じゃないんですが……
 

「大した手間じゃないし、近くまで行きますよ。なあ、椎那」

マスターが笑ってそう言いました
 

わたしの考えていることが わかってるみたいです

さすがはマスター
 

「ええ、お気になさらずに」

わたしはそう答えると 南の町の中へハンドルを切りました
 
 
 

「すまんかったのお」

「本当にありがとうございました」
 

車から降りたおじいさんとおばあさんが そうお礼を言って下さいました

お役に立てて よかった
 

「よかったな。んじゃ、行こうか?」

おじいさんとおばあさんに会釈したマスターが わたしの方を向いてそう言いました
 

「はい、それじゃ行きましょう」

プップッ とお別れの挨拶の代わりにクラクションを鳴らして走り始めます
 

ハックミラーに映るおじいさんとおばあさんが 小さくなっていきます

また どこかでお会いできるでしょうか?
 
 
 


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