あめあがりのあさ
 
 

久しぶりに雨が降った 次の朝
カーテンを開けると あたりは白い世界に包まれていました

道を挟んだお向かいの家が 白く霞んで見えるくらいの 霧
そんなに冷え込んでいないのに 吐く息が白く遠くまで届いていきます
 

もう長いことここに住んでいるけれど こんなに深い霧は 初めて
なんだか 幻想的なムードです

どこまでも白い世界に
起き出してきたマスターも目を丸くしています
 

窓から外を見ていると 不意に白い壁を突き破るように車が現れて
また 白い壁の中に消えていきます

まるで どこか別の世界からやってきて
また 別の世界に去っていくように
 

冬らしくない しっとりとした空気
「はぁ」ってすると ずっと遠くまで届く白い息

いつもは眩しい太陽も まるで朧月のように霞んで見えます
全てが白い世界に消えてしまいそうに思えるのは そのせいでしょうか?
 

しばらくして 少しずつ世界がくっきりとし始めました
数十年ぶりの出来事に 静かに幕が引かれます

閉じこめられていた冬の太陽が あたりを照らし始めて
まるで夢でも見ていたように 白い闇が晴れ 世界が形を取り戻していきます
 

ほんのつかの間に過ぎ去っていった白い世界
ちょっとホッとしたような でも少し 残念な気分

いつもと同じ街並みが くっきりと見えてきました
いつもと同じ一日が はじまります

fin 981202
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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