2002/02/13最萌トーナメントセリオ支援SS兼セリオお誕生日おめでとうSS
 

「セリオ、買いました」
                                by◆ChibisA2

 唐突だがセリオを買うことにした。
 いや、買うと言っても夜の街に立っているHMを買ってそのままどこかにしけこむとか、
HMパブとかHMソープとかに行くと言うわけではなく、購入、そう購入購入、セリオ
そのものを購入しようと決心したのだ。
 

 数年前に発売されたHM-12と13は街中いたるところで使われていて、今やメイド
ロボといえば”マルチ”、”セリオ”といわれるまでになっている。
 彼女達を街で見るにつけ、家に帰って部屋の惨状を見るにつけ、メイドロボが居たら
なぁ、と思っていたのだが、値段が高くて指をくわえて見ているしかなかった。
 オレのような貧乏人には逆立ちしても手の届かない代物だったのだ。
 ところが人生ってのはよくわからないもので、ついこの間競馬で万馬券を当てて状況が
一変した。
 キャッシュでポンと身請け、もとい、購入するにはちょっと足りないが、頭金にするに
は十分すぎる額の金が手元に舞い込んできたのだ。
 オレは喜び勇んでHM-12と13のカタログを手に入れ、穴が開くくらいじーっと
見つめた。
 んー、迷う。
 迷う、迷う、迷う。
 迷う迷う迷う迷う迷うーっ。
 はぁはぁはぁ。
 つるぺたでちっちゃくて可愛いマルチも良いが、クールでお姉さんチックでグラマラス
なセリオも捨てがたい。
 どうしよう?
 どっちがいい?
 両方? さすがにそれは無理だ。
 マルチならあぐらかいた足の間にちょこんと座らせて、後ろからふにっと抱きしめる
ことができる。
 これはこれで漢の浪漫だ。
 セリオなら後ろから抱きついてその豊満な胸を、手のひらに余るくらいにたわわに
実ったふくらみを下から包みあげるように持ち、その柔らかさを堪能することができる。
 もちろんその時ははだエプだ。そうはだエプ。はだかエプロン。
 エプロンの両脇から手を差し入れて直に胸をこう……
 あー、なんか想像するだけでえっちな光景だ。
 さて、どうしようか?
 オレの頭の中で2つの本能が戦っていた。
 つるぺたろりーさん萌えな自分と、知的でおっぱいボンなおねーさんマンセーなオレ。
 オレは問い詰めた。
 自分自身を問い詰めた。
 小一時間ほど問い詰めた。
 自分、どっちがええんや? と。
 そして唇をかみ締めながらこの究極の選択にファイナルアンサーを出した。
 セリオだ。
 セリオにしよう。
 セリオにはだエプで料理作ってもらって、料理中に後ろから抱き付こうとして「ダメで
すよ。ご主人様」って感じでたしなめてもらおう。
 で、そんな言葉はお構いなしに抱きついて、両脇から手を差し込んで……
 あるいはセリオに向かってわがままいっぱいに駄々をこねてみよう。
「もう、ご主人様ったら、わがまま言わないで下さい」とか「甘えても拗ねてもダメです」
とかお姉さんチックに言ってもらおう。
 そしたらゴロゴロと座っているセリオのももに擦り寄って、膝枕してもらって……
 ああ、It's so wonderful days.
 
 

 そうと決まったらじっとしては居られない。
 取るものも取らず換金した金を引っつかんで家を出た。
 近所のHMディーラーは……っと、ああ、駅前の通りにあったな。
 ディーラーの扉をバンと開けて大声で、

「セリオ下さい!!」

 ……なーんてやったらチャットのネタになるなぁ、と思ったが、ガラスの向こうは
そんな雰囲気じゃなさそうなので止めた。
 そもそもバンと開けれるようなドアじゃなかったし。
 バンとやったら割れそうだし。
 試して血だらけになるのは嫌だから、おとなしく自動ドアを開けディーラーの中へ入る。

「――いらっしゃいませ」

 と言う受付セリオさんの声。
 ああ、ものの数時間でこの声がオレのものに。
 感慨に浸っていると向こうから販売員がやってきた。
 セリオを購入すると伝えると奥にある豪華な応接セットに通される。
 すかさずお茶を持ってあらわれるセリオさん。
 全く隙のない流れるような動作。
 ああ、この優雅な動作が数時間後にオレのものに。
 感慨に浸るオレを後目に販売員はカタログを広げ細かな説明を始めた。
 少しくらい余韻に浸らせてくれよ。
 恨めしげなオレの目など全く無視して販売員は説明を続ける。
 購入時にかかる費用、支払方法、オプション、使用上の注意、その他。
 若干の雑談も交えながら決めていく。
 結構買う側の希望に添ってくれるものだと感心した。
 最後に販売員がこう言った。

「あ、そうそう、AIの設定どうしましょう?」

 AIの設定?
 どうやらある程度は性格付けができるらしい。
 目の前に広げられた設定可能な性格一覧を見て、オレは迷わず答えた。

「ち、知的なおねーさん仕様で」

 そう、知的なお姉さん。
 ごろごろはにゃーん、と甘えるには欠くことができない仕様がこれ。
 わがまま言って駄々をこねるのに必要な設定。これ最強。
 画して数日後、我が家にセリオがやってくることになった。
 ちなみに数時間後じゃなくて落胆したのは内緒。
 ディーラーからお持ち帰りできるかもしれないとか期待したのも内緒。
 その時はお姫様抱っこだーっって考えていたのも内緒だ。
 さあ、はーやくこいこいセリオさん。
 届く日が待ち遠しいぞーっ。
 
 

 数日後。
 指定された時刻に玄関のドアフォンが鳴った。
 マイクールビューティのお出ましだ、と喜び勇んでドアを開ける。
 目の前には大きな木箱と配達のお姉さんが2人。
 見るからに重そうな木箱を2人でひょいと持ち上げると、家の中に運び入れてくれた。
 よかった、掃除しておいて。
 結構美人な配達のお姉さん達は、慣れた手つきで木箱を開けると中から眠れる森の
セリオを取り出し、そのまま木箱を回収して出て行った。
 後に残されたのは、オレとセリオとそして……

「さて、それじゃセリオさんを起動させましょう〜」

 おまえだって形はちっちゃいがセリオだろうが。
 後に残されたのは、オレとセリオとこのやたら元気な手のりサイズのセリオ。
 ちびセリオとでも言えばいいんだろうか?
 そういやキャンペーン中でおまけに一つついてくるとか言ってたっけか。
 小さいセリオって言うから、マルチの身体を更に小さくしたようなのが来るのかと期待
してたのに。
 甘えさせてくれる知的なおねーさんセリオ&キュッと抱きしめられるちっちゃなセリオ
に囲まれてうはうは状態だと思ったのに。
 ……神様のうそつき。
 オレのそんな気持ちをよそに、ちびセリオはてきぱきとセリオの起動を進めていった。
 オレに色々指示を出して。
 そう、オレにあれこれやるように命令しくさっているのだ、このちびは。

「接続したケーブルの確認をしたら〜 メンテナンス用のパソコンを起動してください〜」

 あー、起動? はいはい……って、だからなんでオレがおまえに命令されないかんのじゃーっ。
 ぜいはぁぜいはぁ。

「怒ると血圧上がります〜 それに〜 ご主人様が作業しないと〜 セリオさんはずーっ
とこのままです〜」

 そう、そうなのだ。
 このちびは図体が小さすぎて自分で作業できないのだ。
 だからオレにあれやこれや指示を出しているのだが……
 あー、なんか納得いかん。
 しかし、ここでこいつの言うとおりに動かないとセリオはいつまでたっても起動しない。
 くー、腹立たしいがここはこヤツの言う通りにするほかあるまい。
 オレはセリオの膝枕を夢見てがんばった。
 メンテ用のパソコンを起動し、初期設定を行う。
 大概のことはディーラーサイドで設定済みだから、主にオレのプライバシーに関わる
部分を入力していく。
 ああ、なんかオレの秘密を鷲掴みにされていく気分。
 ちょっといいかも。

「それじゃ、セリオさんを起動します〜 どれかキーを押してください〜」

 ちびの指示に従いキーを押す。
 セリオのS。
 ボタンを押した刹那、セリオは目を開け、そしてゆっくりと起き上がった。

「――HM-13セリオです。よろしくお願いいたします。マスター」

 セリオはオレを見ると、頭を下げそう言った。
 マスターと言うのはオレがそう呼ぶように設定した呼び方。
 どうやらうまく動いてくれたみたいだ。
 いつのまにか人の肩に登ったちびが、セリオに手を振る。
 セリオはちびを見ると軽く手を振りかえした。
 あ、なんか良い感じ。
 こうして家にセリオがやってきたのだった。
 
 

 数時間後、セリオは台所で夕飯を作っていた。
 はだエプ状態で。
 いきなり頼んで断られたらどうしようかとドキドキしたが、意外にすんなりセリオは
受け入れてくれた。
 購入したてだから、従順なんだろうか?
 頼んだときちびが、

「裸にエプロンで料理する理由がわからないです〜 必然性がないです〜」

 と騒いだが、漢の浪漫だ、と一蹴した。
 ちびは納得いかないとばかりにむくれたが、起動してしまえばこっちのもの、今更ちび
にへつらう必要はない。
 そのまま放っておいた。
 トントントン、とリズミカルな音を立てて、セリオが野菜を刻んでいく。
 ああ、そういや台所が台所としてまともに機能するのは何年ぶりだろうか?
 別れた彼女が最後に手料理作ってくれたのはかれこれ……
 感慨に浸りつつセリオを見る。
 料理の邪魔にならないように後ろでまとめた長い髪。
 そのまとめた髪の向こうに見える、白くほっそりとしたうなじ。
 緑色のエプロンのひもが映える、白い肌。
 流れるような背中のライン。
 キュッとヒップアップしたお尻。
 そこからすらっと伸びるバランスの良い、適度の細さの長い脚。
 特にお尻からもも、ふくらはぎを経て足首にいたるラインは芸術品としか言いようが
ない美しさだ。
 はぁ、良かった。
 セリオを買って本当に良かった。
 わが人生に一片の悔いなし。
 オレは今猛烈に感動していた。

「わ、どこ見てるんですか〜 ご主人様、視線がえっちです〜」

 いつのまにか人の肩口によじ登ってきたちびが騒ぐ。
 えーい、人の感動を台無しにするでない。

「――どうかしましたか?」

 ちびの声に反応し、振り返るセリオ。
 ほれ見ろ、気付かれちゃったじゃないか。
 なんでもないよ、と声をかけると、セリオはまた料理に戻った。
 さて、己の欲望その1をいよいよ実行に移すときがきた。
 料理をしているセリオの、はだエプ状態のセリオの背後から抱きついて、その豊満な
胸をっっ。

「あ〜 お料理の邪魔しちゃだめです〜」

 えーい、うるさいっ。
 ちびの言葉を無視し、セリオに背後から抱きつく。
 少しかがみ加減で野菜を切っているセリオのうなじに顔があたる。
 手は迷わずエプロンの脇から中へ。
 下から乳房を持ち上げるように、手のひらで包みあげるように……
 ふにっ。
 柔らかで存在感のある重みが手のひらに伝わってくる。
 ああ、幸せ。
 手のひらでそのおっきな胸をふにふにといじり、指先で乳房の先端をつまみ……

「――マスター、料理中です。危ないですから離れていただけませんか?」

 セリオが料理の手を止めて言う。
 しかしこの状態で言うとおりに引き下がるヤツが何人居るだろう?
 恐らく100人居たら100人ともそのまま触りつづけるだろう。うん。
 セリオの言葉を無視して触りつづける。
 ふにふにふに。

「――マスター、やめていただけませんか? 料理を続けられません」
「そうですそうです〜 えっちなのは良くないと思います〜」

 2度目のセリオの警告も、ちびのたわ言も無視。
 うにゅ〜、良いなぁ、この感触。

「――マスター、料理は中断でよろしいのですか? 夕飯の時間が遅れてしまいますが」
「あー、んじゃこのまま続けて。ご飯が遅れるのはやだ。でも、抱きつくのやめるのもやだ」
「――そう言われても困ります」
「ほっほっほ、よいではないかよいではないか」
「――やめてくださいと言ってるじゃないですかっ」

 セリオはそう言うと光の速さでオレの抱きつきから逃げ出し、包丁の切っ先をオレの
鼻先に向けた。
 今までの至福の時はどこへやら、背中にじっとりと汗がにじむ。
 イヤーな感じの汗。
 このままでは命が危うい、そう思う。

「ご主人様〜 今はやめておいた方が良いと思いますよ〜」

 肩口でちびが言う。
 こくこくこくこくこく。
 その言葉に反射的にうなずいた。

「――ご飯を食べないとおなかが空いてしまうじゃないですか。おなかが空くと動けなくなって死んでしまいます。ですからまず料理が先です」

 はぁーい。
 うー、途中までは良い感じだったんだけどなぁ。
 後ろから抱きついて、わがまま言って困らせて、まではうまくいったのに……
 つ、次こそはっ。

「次こそは、どうするんですか〜?」

 へ?
 あ、意気込むあまり声に出してしまったか。
 適当に取り繕ってその場を納め、しばらくして出てきたセリオの手料理に舌鼓を打った。
 はぁ〜、うまい。
 本当にうまい。
 よかったぁ、セリオを買って本当によかったぁ。
 セリオはコタツの向こう側でそんなオレの顔をじーっと見ていた。
 ちびもコタツの上にちょこんと座ってオレの顔を見上げている。
 この視線の意味するところは……

「うまいっ、本当にうまいよ。セリオありがとう」

 手放しで料理を誉めると、セリオはちょっとうつむいて「――ありがとうございます」と礼を言った。
 ちびはセリオのところまで行って、セリオとハイタッチしてやがった。
 そんなに喜ぶなよ。
 照れるだろ。
 
 

 夕食の片付け後、台所に居たセリオがオレに声をかけた。
 なにごとかと思い急いで台所へ行くと、セリオがさっきの、料理の姿勢で立っていた。

「――続きをどうぞ」

 続きって、さっきのアレの?
 え、あ、その、つまり抱きついても良いってこと?
 抱きついてあんなことやらこんなことやら、あまつさやそんなことまでしちゃっても
良いってこと?

「さっきはお料理中でしたからね〜」

 またもやいつのまにか肩口に登ってきたちびがそんなことを言う。
 あの〜、もしかして据え膳ってヤツですか?

「――もう先ほどのように拒絶したりしませんので、思うままにどうぞ」

 あー、いやその、思うままってあなた。
 少しは恥じらいってものが、ねえ?
 いや、うれしいんだけどさぁ。

「据え膳食わぬはなんとやらって言いますよ〜」

 うっさいちびすけ。
 言われなくてもわかっておるわ。
 オレはセリオに言われるままに抱きついた。
 抱きついて手を脇から差し入れて……
 なんだかセリオに主導権を握られてしまったような、そんな気がした。
 
 

 数ヵ月後、学習をつんだセリオのAIは、オレの当初の希望とは微妙にずれて育って
いった。

「――マスター、お膳の支度済んでますか?」

 あ、いけねえ、まだだ。
 ちびとゲームで遊んでて忘れてた。

「――もうご飯ができますから、お膳ふいてお茶碗用意してください」

 あーい。
 でもやる気ナッシング。
 もうちょっとで小生意気なちびすけを粉砕できたと言うのに。

「――働かざるもの食うべからず。ちゃんと準備してください」
「でもさー、よく考えたらこう言うのってメイドロボの仕事じゃないか?」

 だよなぁ。
 自分で言って自分の言葉に深くうなずいてしまう。

「――そう言うことを言うと、今夜は無しですよ」

 あうち、それはご勘弁を。

「――だったらわがまま言わないで、ちゃんと言われたことをしてください」

 はぁーい。
 最初のあれ以来主導権を握られっぱなしのオレは、夜のえっちタイムを餌にセリオに
いいように操られている。
 なんでこうなっちゃったかなぁ。

「それは〜 ご主人様がえっちだからです〜」

 そうなのかなぁ。

「そうです〜」

 もしかして、おねーさん仕様って向こうに主導権握られるようなこう言う状況を指す
のか?
 確かにセリオは知的でわがままを聞いてくれて甘えさせてくれる良いお姉さんではある。
 膝枕もしてくれるし、その状態で耳掃除もしてくれる。
 甘えてわがまま言えばどんなプレイだってさせてくれる。
 でも、主導権は向こう持ち。
 いや、いいんだけどね。
 もしかして、AIの設定を「世話焼き女房」かなんかにしていたら、今ごろ好き放題
だったのかとちょっとだけ思う。
 

「――マスター、ご飯ですよ」

 いつのまにかセリオがお膳をふき、茶碗の用意もしてくれていた。

「――召し上がれ」

 茶碗にご飯を盛って差し出すセリオ。
 きっと今夜も、オレの期待に応えてくれるのだろう。

 ……片づけはオレがやろうかな。
 

fin
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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へたれのたわごと

へたれSSをご覧頂きありがとうございました。
ついでにこんな後書き擬きまで見ていただいてどうもです。
誰かの書き口によく似た暴走SSです(笑)
最萌え支援SS兼セリオさんお誕生日おめでとうSSと言うことで平にご容赦を。
あ、途中出てくるちびすけについては、とあるページのちびセリオの設定を使いました。
長々失礼しました。
それでは。