夜空 −ちひろのつぶやき5−


仕事で帰りが遅くなった 帰り道

ふと 夜空を見上げてみた


空色を暗くしたような 暗めの青い色

向こう側に 灰色の雲が見えていた


あれ?

なんで雲が見えるんだろ?


夜空ってこんなに明るかったっけ?

つい口をついて出た僕の言葉に ちびしいが不思議そうな顔をしている


あのね……

ちびしいに なんで僕がそんな風に思ったのかを教えてあげた


夜空と言うのは 雲なんか見えないくらい黒いような印象がある

そう言えば子供のころ 夜の暗闇がとても怖かったっけ


街灯と街灯の間が とても暗くて

吸い込まれるくらい 黒く見えて


でも 今目の前にある夜空は暗くもなければ怖くもない

もちろん 吸い込まれそうな気もしない


だから 思ったんだ

夜空っていつからこんなに明るくなったんだろう? って


ちびしいは 相変わらず不思議そうな顔をしている

それはそうかも知れない


ちびしいが世の中を知るようになって 3年ちょっと

僕の頭の中にある夜空は 多分10年以上前の空なのだから


夜空が明るいのは

それはそれで ありがたいことだと思う


暗闇におびえなくても いいから

夜 比較的安心して歩けるから


でも なにか違う気もする

夜空が夜空でないような そんな気分


なにか大事なものをなくしてしまったような そんな気分

そう言えば 見える星の数がかなり減った気がする


いつのまにか変わっていた夜空に 少し驚いて

それ以上に その変わった夜空に気づかなかった自分に驚いて


意外と 自分で思っている以上に

ココロに余裕がないのかもしれない と思った


fin20010531



20020615 奈落より再録



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