大阪日帰り道中記 −ちび椎那のつぶやき13&ちひろのつぶやき3−



  列車は駅をでて 街の明かりの中を走り始めました
  ぐんぐんと上がるスピード
  家々の光が あっと言う間に後ろに流れていきます



      ちびしいは いつもの通勤電車と同じように
      窓に顔をぺちゃっと押し当てて 外の景色を見ている
      きっと 今日の出来事を思い出してるんだと思う



  今日は 朝から新幹線でお出かけでした
  新幹線に乗るのは 今日で2度目
  大阪まで 2時間半の旅です



      会社の同期の結婚式に呼ばれて 朝から新幹線で大阪に向かった
      1人でお留守番 と言うのもちょっと可哀想なので
      ちびしいも連れていくことにした
      なんだかとてもうれしそうだ



  新幹線の中では ちひろさんと一緒に大阪に行かれる同期の方とお話ししてました
  その方は 新横浜の駅でシウマイとビールを買い込んでいて
  ビール片手に にこにことお相手して下さいました



      ひかりは一路 西へ
      一緒に行く同期はシウマイをつまみに500mlの缶ビールを飲んでいる
      僕は飲めない口なので ほうじ茶にシウマイ弁当
      久しぶりに食べるけど − いや 久しぶりに食べたからかな?
      とてもおいしかった

      シウマイをひとかじりちびしいにあげる
      にこにこしながら食べてるなあ
      ちびしいのサイズだと ひとかじりで腹一杯かも知れない



  同期の方とお話ししてたら ちひろさんがお弁当の中のシウマイを一つくれました
  ……と言っても わたしの身体には一つでもかなりの大きさです
  かぷっとひとかじり
  ちひろさんの好きな味 とっても美味しいですね

  「あ、あう」

  そんなわたしを見て ちひろさんが優しく頭をなでてくれました
  急にどうしちゃったんでしょ?
  わからないけど とってもうれしいです



      列車は更に 西へ
      富士山の横を過ぎ 静岡を過ぎる頃には買い込んだ弁当もすっかり空っぽ
      まったりとした空気が 周りに流れていた
      新大阪まではまだあと1時間以上 暇だ……



  同期の方の2本目のビールが空になったころ みなさんが眠そうにし始めました
  昨日のお仕事も 忙しかったですし
  今日も朝早いですから きっと眠いでしょうね

  「ちひろさん ちひろさん」

  ちひろさんの膝の上から呼びかけます

  「あのですね……」



      腹も膨れていい加減眠くなった頃 ちびしいが話しかけてきた

      「あのですね、みなさん眠たそうですし、わたしが起きてますから
       お休みになったらいかがでしょか?」

      世知辛いことだが 最近電車の中での置き引きとかが増えている
      もちろん新幹線も例外ではないから なるべく寝ないようにしていた
      どうやらちびしいも その話を覚えてたらしくて
      だから さっきみたいなことを言ってくれたんだと思う
      いい加減 眠さもピークに達していたし お願いすることにした

      スーツのポケットの中から 首だけ出して見張っててもらうことにする

      「なにかあったら大きな声を出すんだよ」

      そう言って 一寝入りすることにした
      おやすみ…… く〜



  ちひろさんから ”どこぞのガキに連れてかれかねないから”と言われて
  スーツのポケットの中で 見張り番をすることになりました

  「それじゃよろしく頼むね」

  ちひろさんが 人差し指で頭をなでてくれました
  はい がんばりますね


  その後 何事もなく新大阪の駅に着きました
  ちひろさんも同期の方も京都あたりで起きてらして

  「ありがと」

  って言って下さいました
  えへへ お役に立ててうれしいです



      ちびしいのお陰で 京都のあたりまで寝ることができた
      何事もなかったみたいで 一安心
      軽く伸びをして 降りる準備−と言っても大したことないけど−を始める
      大阪は……3年ぶりか



  電車は定刻通り 新大阪の駅に滑り込みました
  わたしにとって初めての大阪です
  どんな街なんでしょか?

  新大阪の駅から大阪の駅に出て そこで環状線に乗り換えます
  山手線みたいに ぐるっと一回りしてる電車です
  座席の感じが おうちのほうとちょっと違いますね



      今回の目的地は 大阪の南港
      4年前 研修で大阪にきたときに 一度だけ行ったことがある場所
      久しぶりに来てみたら あの時にはなかった路線が開通してた
      当時はわざわざぐるっと遠回りをした覚えがあるんだけど
      今日は楽に行けそうだ
      大阪駅から環状線に乗って 乗換駅の弁天町に向かう



  環状線の電車の窓から見える街並みを ぼーっと眺めていたら
  こんな看板を見つけました

  ”BarBar パパ
   美容  ママ”

  ……こ、こういうとこが”大阪”なんでしょか?



      電車の中 胸ポケットからちびしいが外を眺めている
      なにか面白いものでもあった? って尋ねたら

      「ちょっとずつ おうちの近くと違うんです〜」と言う返事

      なるほど…… 確かに雰囲気が違うよな



  途中で電車を乗り換えて 目指すワールドトレードセンター(WTC)に着きました
  細長い建物に いっぱいお店が入ってます
  とてもにぎやかで 目を引かれるお店ばかりですね

  ……
  ありゃ?
  なんだかちひろさん 懐かしそうにしてます



      4年ぶりのWTC
      一歩足を踏み入れたら 4年前に戻ったようなそんな錯覚におそわれた
      そうそう あの時もこうして同期でダベリながら歩いたっけ
      そう思っていたら ちびしいが声をかけてきた
      とても懐かしそうな目をしてるって言ってる
      わかるもんなんだなあ……

      ”メイドロボとマスターは一心同体”

      なんて言うバカなフレーズが頭に浮かんで 思わず苦笑

      ちびしいに4年前のことを話してあげる
      まだ 今日乗ってきた電車が出来てなくて遠回りしたこと
      ここでみんなでご飯を食べたこと
      隣のタワーのてっぺんまで登ったこと
      なんだかとても懐かしい



  ちひろさんが 4年前の話をしてくれました
  なるほど…… だからあんなに懐かしそうな目をしてたんですね

  わたしにとって この街は
  一度来たことのあるような そんな街
  大阪に来るのは初めてですから
  どこかに似たような雰囲気の場所があるんだと思うんですが……
  どこでしょか?

  そんな話をしていたら 同期の方が

  「臨海副都心のイメージだよ」

  と 教えて下さいました
  臨海副都心…… 有明とかお台場のある場所……
  なるほど 確かにお台場のイメージに近い気がします



      WTCを抜けて 目指すホテルへ
      まだ 式まで1時間以上あるけど
      披露宴の時の 余興の打ち合わせをしなくちゃいけない
      顰蹙を買うことはないだろうけど 外すと寒いから念入りに打ち合わせる
      よし あとは勢いだけだ



  ちひろさんたちは WTCを抜けて別の建物へ
  ありゃ? そっちが目的の場所ですか?
  ……そう言えば 結婚式でしたっけ?

  中に入ってから 披露宴会場の近くでなにやら打ち合わせをしてますね
  披露宴の時に 同期のみなさんで余興をやるんだそうです
  三々五々集まってきた同期の方は 全部で9人
  なにをするんでしょ?
  ほへ? わたしも参加ですか?
  いるだけでいいから?
  わかりましたーっ



      打ち合わせは 急遽本番にちびしいを混ぜることになってお開き
      あとは野となれ山となれ 無事終わることを祈ろう

      ちびしいが「奇跡を待つより捨て身の努力、です〜」とか言ってるけど
      しいちゃん それ使い方違うし 古いよ
      大体 どこで覚えてきたんだ? その知識は



  式の時間が近づいてきたので チャペルへと向かいました
  チャペルの前には 以前伊豆に行ったときにご一緒したお姉さんが居て
  その時のお話で盛り上がっちゃいました
  なんでも そのお姉さんもついこの間ご結婚なされたとか……
  本当におめでとうございます

  そんなお話をしてたら いつのまにやら周りに人が……
  新婦さんのご友人なんだそうです

  「やぁ〜 かわいい〜〜」とか「ねえねえ、誰の?」とか
  「めっちゃ かわいいわぁ〜」とかとか

  ちょっとびっくりです



      チャペルの前で 同期の女の子を見つけた
      ひとしきり 雑談
      ついこの間結婚したての 新婚ほやほやなんだけど
      そのせいかな? なんだか落ち着きが出たみたい
      彼女はちびしいを知ってるから 2人でなにやら盛り上がっている

      ……とそのとき

      「あのぉ この子あなたの?」

      と言う遠慮がちな声
      いつのまにやら周りに10人くらいの女の子たちが
      興味津々に ちびしいを眺めている
      今時メイドロボなんて そんなに珍しいものでもないと思うんだけどなあ
      特に芦屋のお嬢様たちには(注:新婦とその友人は芦屋のお嬢様です)

      ……とにもかくにも
      ちびしいとその子達と同期の子と いきがかり上僕でしばらくおしゃべり
      なんやかんや言って 結構楽しかった

      式のあとで同期の男連中に

      「ちいちゃん 妻子持ちが飛び道具使うのは反則だよー」

      と突っ込まれたけど そう言うつもりは全くないぞ うん



  ホテルにある 明るい雰囲気のチャペル
  パイプオルガンの調べに乗って 式が始まりました
  何度見ても 結婚式ってすてきですね

    独特の厳かな雰囲気
    みなさんの祝福
    新婦さんの喜ぶ顔

  見ているわたしまで うれしくなってしまいます



      式も滞りなくすんで 披露宴
      うちらの余興は一番最後だから 今のうちに料理を楽しんでおくことにする
      披露宴の内容は……
      どうやらやっぱり緊張してたみたいだ あまり覚えてない
      料理のことはよく覚えてるんだけどなぁ……



  新郎新婦の紹介 主賓の挨拶 乾杯……と 宴は決まり通り進み
  お料理が出てきました
  フレンチのフルコースです
  最初に出てきた前菜には…… ありゃ サーモン
  ちひろさんは サーモンの独特の臭みが苦手なんです

  ……ありゃま ぱくぱく食べてますね
  苦手じゃなかったんでしょか?
  そう思っていたら ちひろさんがそのサーモンを一切れくれました

  「うまく臭みを消してあるね。これおいしいよ」

  って言ってます
  パクッ
  確かに臭みがほとんどありません
  なるほど… この味はメモリーしておきますね

  それから お料理が出てくるたびに
  ちひろさんはわたしに一切れずつわけてくれました
  ホテルのグレードに違わず お料理の質も高いみたいです



      ちびしいと美味しい料理−披露宴でこんなにおいしいのはそうないような
      そんな料理を堪能してるうちに 余興の出番が回ってきた
      一度会場の外に出て わざわざ家から持ってきた会社の作業着を羽織る
      新婚ほやほやの2人の新生活に潜む危険を
      KYT−危険予知訓練を通して考えよう と言うのが余興の中身だ

      危険予知訓練というのは 大雑把に言うと
      ”作業に潜む危険をみんなで考えて抜きだし 指差し唱和して
       事故を起こさないように気をつけよう”と言うもの

      もっとも披露宴の余興だ 堅苦しくする気は全くない
      おもしろおかしく話を持っていって 2人にキスさせようと言うわけだ
      さて どうなることやら……



  いよいよ余興が始まりました
  会場の外から 駆け足で入場です
  わたしはちひろさんの肩の上
  さあ がんばりましょう



      余興は滞りなく進み
      適度に笑いを取りつつ 目論見通り2人にキスさせることができた
      うちらの期待通り 濃厚のなのを1発
      彼らしい

      「タッチ&コール! 夫婦円満で行こう! ヨシ!!」
      「夫婦円満で行こう! ヨシ!!」

      最後のシメもばっちりと決まった
      結構大きめの みんなからの拍手
      予想以上に受けがよかったみたいだ
      ホッと一息 はぁ… うまくいってホントによかった



  ちひろさんの肩の上で みなさんと同じように動きます
  わたしだけ作業着がないのが ちょっと残念
  勢いが大事だって言ってましたから なるべくきびきびと動きます
  それにしても みなさん大きな声ですね……

  なんだかあっと言う間に時間が過ぎて みなさんからの拍手の中を退場です

  「おちびちゃん ありがとう」

  新婦さんのお母様が そう声をかけて下さいました
  喜んでいただけたみたいですね
  とっても うれしいです



      余興のあと
      親御さんの挨拶があって
      新郎の挨拶があって
      いい雰囲気の中で 無事に披露宴はお開きになった



  会場の外で 新郎さんと新婦さんにご挨拶しました
  ちひろさんと一緒に「末永くお幸せに」って
  新婦さんはわたしの頭をなでると
  わたしの背丈の倍くらいある花を一輪 くれました

  「うちに遊びにおいでね」

  はい 必ずおうかがいしますね



      2人に挨拶して 同期連中に声をかけてから
      みんなより 一足お先にホテルを出た
      みんなはこれから 隣のビルで2次会
      でも僕とちびしいは それには出ないで帰ることにしていた
      本当は出たかったんだけど 出ると今日中に家に帰れないから
      今帰れば 11時過ぎには家につけるはずだ



  みなさんにごあいさつして ホテルを出ました
  新大阪の駅までは ここから電車を乗り継いで1時間弱
  新幹線に乗る前に おみやげが買えそうです

  2次会の幹事さんが

  「帰るん? 残念やなぁ…」

  とぼやいています
  ビンゴゲームを盛り上げるお手伝いをして欲しかったんだそうです
  あう お手伝いしたいのは山々なんですけど…
  ごめんなさいです



      地下鉄を乗り継いで 新大阪へ
      上手く電車が来てくれたんで 思ったよりも早く着いた
      さて おみやげ探すか……
      どれどれ…っと



  おみやげも買って 帰りの車内で食べるお菓子も買って
  準備万端 整いました
  あとは帰るだけですね

  定刻
  発車のベルが ホームに鳴り響いて
  ゆっくりと滑り出すように走り出す 列車……って ありゃ?
  発車しませんねえ
  それどころか向こう側のホームに「のぞみ号」さんが入ってきます
  どうなってるんでしょ?



      僕とちびしいを乗せた 新大阪発東京行きの「ひかり号」は
      定刻を 数分遅れて走り始めた
      前を走る「のぞみ」が遅れてるせい らしい
      ま 今日中に家につければいいや



  列車が減速し始めました
  新横浜の駅は もう目の前です

  今日は 本当にいろんなことがありました
  とっても とっても 楽しかったです
  今度は 奥様やはるちゃんと一緒に行きたいですね
  もちろん もっとゆっくりと見て回れるようにして

  列車が新横浜の駅に着きました
  おうちまで あとちょっと
  ちょっとせわしなかったけど
  新婦さんの ラベンダー色ののドレスが印象的な
  そんな”大阪へのお出かけ”でした


fin20000327
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思いの外、長編(冗長なだけとも言う(爆))になってしまった
今回のちびしい日記、いかがでしたでしょうか?

お話の中にもあるように、会社の同期の結婚式で大阪に行って来ました。
新郎が「宿手配するから2次会も出てってよ」と言ってくれたんですが、
次の日用事があったので泣く泣く帰ってきました。

実は次の日に神戸で、オレがたまに売り子のお手伝いをしてるサークル
LeafTeaさんがイベントに参加してたんです。
泊まってればそれにも行けたんですけどね。残念でした。


20000902 奈落より再録






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