アマガミ 塚原ひびき 考


 塚原ひびき、と言うキャラクターについて、SSのプロットやSSそのものを
書きながら考えたことを備忘録代わりに記載します。

 先ずゲーム内における、塚原ひびき、と言うキャラクターの役割、位置付けを
列挙してみたいと思います。

 ・森島はるかの保護者
   はるかのフォロー、けしかけ、誘導、など、はるかの道標(みちしるべ)
 ・七咲逢の尊敬する先輩
   七咲のフォロー、相談相手、道標
 ・橘さんに対して直接間接的に影響を与える存在
   誘導、けしかけ、道標

 基本的に森島はるかと七咲逢のエピソードに絡んでいます。
 キャラクター的にはこの他に、美也と面識があることになっていますね。
 創設祭がらみで絢辻さんと面識があるかもしれませんが、ゲーム中では触れられて
いなかったような……。
 (追記:絢辻さんのドラマCDを聞く限り、面識はなかったようです)
 三年生キャラのまなるっこたちとは同じクラスと言うことになっています。

 で、その塚原ひびきには次のようなステータスが付与されています。

 ・水泳部部長
 ・前創設祭実行委員長
 ・国立大学医学部へ推薦合格
 ・他の生徒、教師が一目置く存在
 ・モデル並みの体形(橘さん目視)

 いわゆる「できる子」「優等生」と言う扱いになっているのがここからわかります。
 水泳部でなければ生徒会(生徒会長?)と言う感じですね

 それじゃ、そんな「親友と後輩の道標になる、優等生の彼女」はどんな性格なのか。

 ・文武両道
 ・冷静沈着
 ・クール
 ・面倒見がよい
 ・気が利く
 ・話がわかる
 ・知略家(軍師)
 ・ノリが良い(悪ノリも含めて)

 わお、もう完璧じゃないですか。
 勉強ができて、周囲からの信頼も厚く、気はやさしくて力持ち(違)
 冗談もわかるし気は利くし、で、非の打ち所がないですね。

 でも、人間完璧なだけじゃ面白くないものです。
 ちゃんと公式設定に苦手なものがいくつか設定されています。

 ・はるかにからかわれる、いじられるのが苦手
 ・料理が苦手(公式設定だが、七咲ナカヨシのクリスマスの記述と矛盾?)

 そして、公式設定にはかかれていない、彼女の一番のウィークポイントがこれ。

 ・強面コンプレックス

 特にこの「強面コンプレックス」は彼女にとって強烈なもののようで、色んなシーンで
ことあるごとに出てきます。
 「私は強面だから……」「見てのとおりの強面だから……」などなど。
 はるかとの対比のためとはいえ、ここまで言わなくてもと思うくらい強面強面と
彼女は自分のことを言うのです。
 挙句に橘さんまで「確かに強面」と言う始末。
 どんだけなんでしょうね。

 彼女が本気を出したら完璧すぎて太刀打ちできるキャラがいなくなりかねないから
強面と言う足かせをして、彼女が2,3歩引く位置にくるようにしている、そんな気が
します。

 こうしてつらつらと考えてみるに、ぶっちゃけると塚原ひびきというキャラクターは、
製作側がストーリーを思うように展開するための便利キャラ、なのではないかと思います。
 RPGで魔法使いが空を飛んだ時に「どうして空が飛べるんだろう」と誰かが尋ねたと
します。
 魔法使いはきっとこう答えるでしょう。「それは魔法だからさ」と。
 それと同じように、ストーリー展開に詰まるような事態が起きたときにさっと現れて
話しのつじつまをうまくあわせてくれる、そんな位置付けなんじゃなかろうかと。
 「だって塚原先輩だから」と言われれば納得してしまうそんな存在なんじゃないかと。
 相当うがった見方かもしれません。

 でもまあ、製作側がどう思っていたかはさておき。
 七咲アコガレルートに「七咲とひびきが体育館横で部活の打ち合わせをしている」と
言うイベントがあります。
 派生イベントで必須のものではありません。
 個人的にはこのイベントを「三角関係の修羅場」と呼んでいますが、そこでのひびきを
見て、ああこう言う一面もあるんだ、と思ったのが、彼女に注目するきっかけでした。
 もちろん、はるかナカヨシの「おかえりんりん」など、他にも破壊力の高いイベントが
あるのですが、七咲に突っ込まれて防戦一方のひびきがすごく新鮮だったのが印象に
残りました。
 パーフェクトに見えるけどパーフェクトじゃない存在。
 こんな彼女がもしメインヒロインだったら……と考えたくなったわけです。


 さて、それじゃ塚原ひびきルートを考えた時に、彼女をどう扱えばいいんでしょうか?
 一つの手として、はるかや七咲にからめてひびきの信頼を徐々に積み上げていく方法が
あると思います。
 気が付いたら彼を眼で追いかけていた、なんて言うパターンです。
 もう一つは、彼女の「強面コンプレックス」を使って橘さんがそれを解消する方向に
動く、と言うのが考えられます。
 コンプレックスの発端がなんなのかはゲーム中で語られていないので、本質的な
解消は無理だとして、橘さんによって彼女が強面であることを気にしなくなれば
良いと考えればストーリーとして成立しそうです。
 非常に単純な発想ですが、あれだけ強面を気にするキャラですから、そこを避けて通る
わけにはいきません。

 ところが橘さんがひびきと仲よくなっていくと考えた時に、いくつかの障害が出て
きます。

 ・橘さんのトラウマ
 ・ひびきの強面コンプレックス
 ・橘さんとはるかの関係
 ・橘さんと七咲の関係

 橘さんのトラウマについては他のキャラの時と同様です。
 公園でのはるかとの出会いで彼はスタートラインに立つことができました。
 でも、だからと言ってはるかの横にいる同級生に積極的に自分から近づくくらいなら
はるかと仲良くなることを彼は選ぶでしょう。
 ひびきはひびきで自分から積極的に動くようなことはしないでしょうから、
彼とひびきが近づくような流れを作ってやる必要があると思います。
 多分、はるかの時のひびきのように、誰かが橘さんとひびきをけしかけないと
関係が進展しない気がします。

 橘さんとはるか、橘さんと七咲の関係は、かなり微妙でデリケートな問題です。
 一つ前の段落で、誰かが橘さんとひびきをけしかけないと、と書きましたが、
そのけしかけ役になれそうなのが、はるかと七咲です。
 ところが、ひびきにとってはるかは親友であり、七咲はかわいい後輩です。
 彼女の性格や位置付けを考えるに、はるかや七咲と橘さんがある一線以上なかよく
なってしまったら、ひびきはきっとはるかや七咲のことをおもんばかって身を引いて
しまう方向へ動くでしょう。それは間違いないことだと思います。
 彼女は優等生で、周囲の状況や空気を読める人ですから、親友や後輩を押しのけて
まで自分の幸せをつかみに行くような行動には出ないと思います。

 と言うことで、けしかけ役としてはるかや七咲が必要だけれど、橘さんとはるかや
七咲の仲が必要以上に進展してしまうとひびきは身を引いてしまう、という非常に難しい
バランスの上に成り立つ塚原ひびきルート、なのかなあ、と。

 きっと、デアイ〜アコガレのときは、はるかや七咲との同時攻略が必要で、
アコガレ以降ははるかや七咲の進め方次第でひびきのイベントがブレイクしまくる
ような事態になって、うまくいかないとアコガレからソエン落ちするような
動きになる気がします(テキタイにはならない、身を引くのだから)。


 ……ざっとこんなことを考えながらひびき先輩SSを書いていました。
 書きながら考えついたこと思ったことも結構あり、当初考えたよりもボリュームが
膨らんで気が付いたら1.5倍の量に(汗)

 エピローグまで書いて、でもまだ書き足りないことがあって番外編も気がついたら
10話を越えてしまいました。

 結局、ひびきの強面コンプレックスは解消されていないのかもしれません。
 橘さんの過去のトラウマもそのままなのかもしれません。
 でもまあ、ひびきは自分のコンプレックスを含めた自分を受け止めてくれる相手を
見つけ、橘さんは高所恐怖症や恐らくトラウマも含めて自分を包み込んでくれる相手を
見つけた。
 うまく描けていないですが、書き手はそう思っています。


 と言うわけで長々書きましたが、あくまで独自解釈です。
 いーや、そんなことはない、と思うあなた。
 あなたなりの塚原ひびき像を作り上げて下さい。
 できれば作り上げた勢いでお話を書いちゃったりするとよいかもしれません。




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