○「そんなのいやだ。たとえ塚原先輩が納得したとしても、僕は納得できない!」
→●「塚原先輩がそう言うなら仕方ない。もう塚原先輩に話しかけるのはやめよう」
「……わかりました。もう、塚原先輩にしつこく話しかけたりしません。
それで先輩の気が済むのなら、もう……」
「橘……君……」
「あの、今までみたいに廊下であったら挨拶するくらいはいいですよね?」
「うん……」
「それじゃ、失礼します」
塚原先輩のつぶやくような冬の風に飛ばされそうな弱々しい「うん」が、屋上を後にする
僕の耳に届いた。
それ以来、僕と塚原先輩は廊下で軽く挨拶する程度の関係になった。
塚原先輩は森島先輩と一緒でないと僕とは話をしようとしないし、僕も塚原先輩に
声をかけて拒絶されるのが怖くて、声をかけられなかった。
今日も学校から帰ってきて、そのまま押し入れにこもる。
ここは僕の心をいやしてくれる唯一つの場所だ。
ああ、なんて心地良いんだろう。
あんな風に人を傷つけてしまうくらいなら、僕はここに居る方がいい。
ずっとここに……。
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このお話は、ひびきスレにアップしたものの再録です。
ごほうびイベントっぽい最中に別のヒロインが出くわすわけですから、
本編ならば涙イベント発生だな、と言うことでそっちの方向で書いたお話です。
こっちの選択肢は橘さん本来のネガティブな部分がでてしまうものです。
なんて極端な子なんだろう……とゲームをプレイしていて思ったのですが、
よくよく考えると、こういうことってあるかもなあ、なんて思いました。
相手のことを気にしすぎて立ちかけた、あるいは風に吹かれて揺らいでいる
フラグを自らへし折ってしまう。
人間関係において、ある程度の押しは必要なんでしょうね。