アマガミ 響先輩SS   「ひびき先輩はなぜ医者を目指したか〜体が弱かった編」



 学校からの帰り道。
 塚原先輩と一緒に、他愛のない話をしながら坂道を下っていた。


 「そう言えば、塚原先輩はなんで医者になろうって思ったんですか?」

 「え?」

 「いえ、推薦で医学部って並大抵のことじゃないから、なにか理由があるのかな
 って思って」

 「医者を目指した理由ね……。そう言えば、君にはその話をしたことはなかったね」

 「ええ」

 「私、子供の頃は身体が弱くて、すぐに熱を出したり咳き込んだりしては近所の
 お医者さんのお世話になっていたんだ」

 「え、それは意外ですね」

 「そう? まあ、確かに水泳部だし、学校に来るときもコートを着ていないから
 意外に思うかもね」

 「はい」

 「そのお医者さんには小さい頃からずっとお世話になっていて、色々話を聞いてくれる
 すごく優しい先生だったんだ。先生の白衣姿が格好良くて、ああ、わたしもあんな風に
 なりたいなって」

 「そうだったんですか」

 「それだけじゃないんだけどね」

 「他にも理由があるんですか?」

 「うちは父も母も忙しい人で、小さい頃は祖父に面倒を見てもらってたんだけど、
 ふふ、おじいちゃんは私が三文安いって言われるのがすごく嫌いで、結構厳しかったんだ」

 「ああ、確かにおばあちゃん子は三文安いって言いますよね」

 「おじいちゃんは口癖のように、人のためになれ、人の役に立つ人になれ、人を助ける人に
 なれって言っていて、医者になろうって思ったのはそのせいもあるのかもしれないな」

 「なるほど、塚原先輩が医者を目指そうと思うのにはそう言う理由があったんですね」

 「うん。あ、そうそう、水泳を始めたのもその先生の薦めがあったからなんだ」

 「そう言えば、七咲も身体が弱かったから水泳を始めたって言ってましたね」

 「うん、水泳は全身運動だから身体を強くするのに効果があって、お陰で今ではこんなに
 丈夫になれた。先生には感謝してもしきれないな」

 「なるほど……、今から水泳部は無理だけど今度しっかり泳いでみようかな」

 「そうだね」

 「その時は個人レッスンをお願いします。コーチ」

 「え??」

 「一人で始めてもどうしていいかわからないですから、塚原先輩に色々教えて
 もらいたいな……って」

 「い、いいけど……」

 「本当ですか! やった」

 「でも、私の指導は厳しいわよ。軽く4,5kmは泳げるようになってもらうから」

 「え!?」

 「単に泳ぐだけじゃ心肺機能がついてこないから、陸上トレーニングもしっかりしないと
 いけないな……」

 「あ、あの、塚原……先輩?」

 「ふふ、楽しみだな」


 こうして塚原先輩が医者を目指そうと思った理由を教えてもらった。
 あこがれか……確かに大事だよな。
 ところで、僕は塚原先輩のハードな指導についていけるんだろうか……



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このお話は、ひびきスレにアップしたものの再録です。
「なぜひびき先輩は医者を目指したのか」と言う流れの中で、
「もしかするとおじいちゃん子で、」と言うレスを受けて書いたものです。 


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