アマガミ 響先輩SS「明日は入学式」



 「それで、ここは……」

 「……」

 「こうなるから、これを……」

 「……」

 「……どうしたの? さっきからじーっとこっちを見てるけど」

 「あ、なんだか楽しそうだなって思って」

 「え、そうかな?」

 「うん、いつもより何割か増しで楽しそうに見えるよ」

 「そんなことないんだけどな。いつもと一緒だよ」

 「もしかして、明日が入学式だからじゃないですか?」

 「そ、そんな、小学生じゃないんだから」

 「でも、ほら、さっきだって入学式に着るスーツの話をすごく楽しそうに話してたし」

 「あれは一緒に買いに行ったはるかの気合の入りようがすごかったから」

 「ほんとにそれだけ?」

 「それだけだよ」

 「ふーん」

 「な、なあに? ちゃんと言いなさい」

 「スーツ選び楽しそうだったなあって。僕も一緒に行きたかったな。
 ひびき先輩のスーツ姿見たかったな」

 「もう、だから言ったでしょ? はるかの買い物に付き合ったらいつ終わるかわからないから、
 受験生を誘うわけにいかなかったって」
 
 「それはそうだけど……」

 「はあ…… 誘えるものなら誘うわよ。君と一緒の方が服を選ぶのだって楽しいに
 決まってるじゃない」

 「だったらなおさら……」

 「そうやってほんのちょっとした気の緩みの積み重ねが大きく効いてくるんだよ。
 そもそものハードルが高いんだから、最初のうちは特に気を引き締めてかからないと」

 「……そうですね」

 「わかった?」

 「……そうですね」

 「なにむくれてるの」

 「……そうですね」

 「もう、子供みたいなんだから」

 「……そうですね」

 「はぁ、しょうがないな、それじゃ明日、入学式が終わったら駅前で待ち合わせ」

 「え?」

 「スーツ選びはもう終わっちゃったけど、選んだスーツを着たところを見せてあげることは
 できるから」

 「ほ、ほんとに」

 「うん、そのくらいの息抜きは必要だからね」

 「やったー」

 「はいはい、だから今はちゃんと勉強に打ち込んで。ここからここまで、30分あればいいかな」

 「え、30分。もうちょっと時間欲しいな……」

 「だーめ。そう言うこというと明日の待ち合わせもなしにしちゃうよ」

 「30分ですね。了解しました!」

 「もう、調子がいいんだから。ふふ、でもがんばってね」


 一緒に入学式のスーツ選びができなかったのは残念だったな。
 でも、入学式のあとでスーツ姿を見せてくれるって話だからがんばらないわけにはいかないよな。
 先輩のスーツ姿か……どんな感じなんだろう。




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