アマガミ 響先輩SS 「こわもて?」


 「おばさん、こんにちは」

 「あらー、ひびきちゃん大きくなったね。もう幼稚園入った?」

 「うん、さくら組」

 「ほら、ひびき。あなたのいとこよ」

 「かわいいー」

 「ほらほら、ひびきお姉ちゃんよ」

 「こんにちは。えっと……ベロベロバー」

 「ふ、ふぇ、ふぇぇぇぇぇぇん」

 「ひ、そ、そんなに泣かないで……ど、どうしよう」

 「あらあらご機嫌斜め? はいはい、泣かないの」

 「ふぇぇ……、ふ、ふふぅ」

 「あ、なきやんだ」

 「ちょっと虫の居所が悪かったんじゃないかな」

 「ね、私にも抱っこさせてもらえる?」

 「ええ、お義姉さん、どうぞ」

 「ベロベロバー」

 「くく、あはぁ」

 「あー、笑った」

 「うーん、いい子ねー」

 「(なでなで)かわいいなあ…… あ、こっち見た」

 「ふ、ふ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん」

 「あらあら、どうしたのかな〜」

 「そうだ、ひびきちゃん抱っこしてみたら?」

 「わ、わたし?」

 「うん。泣きやむかも」

 「はい、ひびき。やさしく抱っこするのよ」

 「うん……」

 「ふぇぇぇ…… ふ、ふぎゃあ、ふぎゃあ、ふぎゃあ」

 「わ、あ、あばれないでー」

 「はいはい、ひびきちゃんこっちにもらえる?」

 「ふぎゃあ、ふ……、ふふぅ」

 「あ、泣きやんだ……」

 「ひびきがあやすと泣き出すなんてねえ……。やっぱりちょっと恐いのかな」

 「お義姉さん、そんなこと言っちゃひびきちゃんがかわいそうよ」

 「でもねえ、こわもてって言うのかしら、ちょっと顔がきついのよね、うちのこ。
 幼稚園でもお友達が泣き出したことあるって言うし」

 「そんなことないわよ。ねえ。ひびきちゃん。お母さんに言ってあげなさい」

 「こわもて……顔がきつい……、こわもて……わたし、こわもて……」

 「ひびきちゃん? ひびきちゃん??」



 「……と言うことがあったんだ。今でも鮮明に覚えてる」

 「そ、そんなことがあったんですか……」

 「ショックだったな。私があやすとまだ赤ちゃんだった従妹が必ず泣き出して、
 ずーっと泣きやまないから、そっか、私が強面だからいけないんだってそう思ったんだ」

 「そ、それはたまたまだったんじゃ」

 「幼稚園で友達とケンカした時も、向こうが悪いからって睨みつけたら泣き
 出しちゃうし。それも強面だからかな……って。他にも小学生の時に……」

 「(確かに目力あるよな……)」

 「ん? 今なにを考えたのかな……?」

 「い、いや、なにも……」

 「ホント?」

 「ホントだって。それに本当に恐いんだとしたら、商店街のあの迷子の子だって
 ずーっと泣きっぱなしだったはずじゃないですか。意識しすぎですって」

 「ふふ、確かにそうかもね」

 「(うわ、その細めた目。ゾクっとくる……)そ、そうだよ」

 「まあ、もうどうでもいいんだけどね。強面かどうかなんて」

 「え?」

 「君も言ったでしょ? 商店街のあの子は私に懐いてくれたし、それに……」

 「それに?」

 「強面かどうかなんて関係なく、私にはこんな素敵な彼ができたんだから」

 「あ、そ、その……」

 「くすっ、顔が真っ赤だよ」

 「そ、そういうひびきだって……」

 「そ、そう?」

 「うん……」

 「ふふ、ふふふ」

 「あはははは」

 「……」

 「……」

 「……(ん……)」

 「……」

……

 「……」

 「……」

 「さ、さあ、勉強の続きしないと」

 「そ、そうだね」


 ひびき先輩がなぜ強面なことをすごく気にしていたのか、その理由を聞いた。
 子供の頃のできごとって結構トラウマになるんだよな。
 でもまあ、今は気にならないって言うし、いいんじゃないかな



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