アマガミ 響先輩SS 「誕生日プレゼント」



 「(う〜ん、僕が女の子から誕生日プレゼントをもらえるだなんて……)」

 「(七咲はお城のプラモデル、森島先輩は……首輪の形の空気まくら)」

 「(なんだかよくわからないけど、僕は幸せ者だ……)」

 「(……でも、塚原先輩からもらえなかったのはやっぱり残念だな)」

 「(塚原先輩、今日は部活の打ち合わせがあって遅くなるって言ってたし、
 しょうがない一人で帰るか……)」

 ……

 ぴんぽ〜ん

 「(ん、お客さんかな?)」

 ぴんぽ〜ん

 「(まったく誰もいない時に限って……)」

 「は〜い」

 ガチャ

 「あ……」

 「こんばんは、橘君」

 「塚原先輩、一体どうしたんですか」

 「どうしたって……決まってるじゃない。今日は君の誕生日でしょ?」

 「ええ……そうです」

 「だから……はい、これ」

 「ええ!?」

 「誕生日プレゼント」

 「そ、そのためにわざわざ?」

 「うん、打ち合わせの後で個別に練習の相談に乗ってたらこんな時間に
 なっちゃったんだ。ごめんね、遅い時間に」

 「いえ、そんなことないです。ありがとうございます」

 「よかった、よろこんでもらえて。こんな時間にお邪魔したら悪いかなってちょっと
 心配だったんだ」

 「そんなことないですよ。あ、でもよくうちの場所がわかりましたね」

 「うん、美也ちゃんに教えてもらって……」

 「なるほど。あ、プレゼント、開けてみてもいいですか」

 「うん……、気に入ってもらえるといいんだけど……」

 ガサゴソ

 「あ、マフラーだ」

 「一緒に帰るときにいつも寒そうにしているから。寒い中で待っててもらうことが
 多いしね」

 「うれしいな。確かにちょっと寒いなって思ってたんです」

 「ふふ、よろこんでもらえてよかった。本当は手編みにしたかったんだけど、
 橘君の誕生日が今日って知ったのがついこの間で、さすがに間に合わなかった」

 「そうだったんですか。いえ、先輩のその気持ちだけで十分暖かいです」

 「……そう」

 「ええ」

 「あ、いけない。もうこんな時間。家で心配していると思うから、これで失礼するね」

 「はい。あ、駅まで送ります」

 「え? それは悪いからいいよ」

 「送らせてください。今日は一緒に帰れなかったし、うれしさを身体で表しているって
 思ってもらえればいいですから」

 「くすっ、それじゃあお言葉に甘えようかな」

 「はい。じゃあ、早速このマフラーを……。あ……暖かいな。すごく肌触りがよくて
 気持ちいい」

 「……もう少し長いと、一緒に巻けるんだけどな」

 「え、なにか言いました?」

 「ううん、それじゃあ駅までお願いするね」

 「はい」


 塚原先輩から誕生日プレゼントをもらった。
 校門で待っている時の寒さまで考えてくれていたなんて……。
 僕はなんて幸せ者なんだろう。



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