アマガミ 響先輩SS 「クリスマスの予定」


 「(クリスマスが迫ってきた)」

 「(今年は塚原先輩と一緒に過ごしたいって思ったけど、そもそも先輩の都合は
 どうなんだろう?)」

 「(ま、まさか既にデートの予定が入ってる、なんてことはないと思うけど)」

 「(先輩の予定を確認して、空いていればデートの約束をとりつけよう)」

 「橘君、おまたせ。寒かったでしょ?」

 「いえいえ、このくらいなんともないです」

 「はい、手を出して」

 「え? あ、はい」

 「どう? 少しは暖かくなった?」

 「ええ、とても」

 「ふふ、よかった」

 「それにしても、あっという間に12月も半ばですね」

 「そうだね」

 「街中がクリスマスの準備って感じがします」

 「創設祭の準備も進んでるよ。橘君は去年は参加した?」

 「いえ、デートの相手のいない寂しい連中で集まってバカ騒ぎしてました」

 「くす、そうなんだ」

 「塚原先輩は創設祭に毎年出ているんですか?」

 「うん、水泳部が毎回おでんの屋台を出すから。去年はあまり手伝えなくて
 迷惑かけたし」

 「え? じゃ、じゃあ今年も創設祭に?」

 「うん、部長がサボるわけに行かないでしょう?」

 「そ、そうですね。そうですよね…… はぁ……」

 「ど、どうしたの? 急に落ち込んで」

 「いえ、なんでもないんです。なんでも……」

 「もう、そんな顔されたら気になるじゃない」

 「今年のクリスマスイブは塚原先輩と一緒に過ごせるかな……と思ってたんです」

 「あ……。ご、ごめんなさい。そっか、そうだよね。クリスマスだよね。
 しまったな……」

 「いいんですよ。今年も梅原達とバカ騒ぎします」

 「もう、そんなこと言わないでよ」

 「え?」

 「ごめんね。部活の屋台のことばかり考えてた」

 「塚原先輩は水泳部をまとめる立場なんだから、当然ですよ」

 「うーん、なにかいい方法ないかな……。そうだ、3年生は最後の創設祭で自由時間が
 もらえるから、その時に一緒に創設祭を見て周らない?」

 「え? いいんですか?」

 「うん。抜け出して2人でどこかに遊びに行くわけには行かないけど、創設祭の中を
 見て周る分には大丈夫だよ」

 「やった。それじゃ、よろしくお願いします」

 「ふふ、はるかのミスサンタコンテスト3連覇がかかっているから、今年のコンテスト
 は見ものだよ」

 「それは楽しみですね」

 「でしょ?」

 「塚原先輩は、ミスサンタコンテストにでたりしないんですか?」

 「え? わ、私はいいのよ」

 「どうして?」

 「ほ、ほら、こんな強面がサンタの衣装着て出てもみんな喜ばないでしょ?」

 「また、そうやって自分のことを強面だなんて言わないで下さい」

 「あ……ごめん」

 「結構いけると思うんですけどね」

 「じ、実は……」

 「実は?」

 「去年、ミスサンタコンテストに出ようかと思って、自分で衣装も作ったんだけど……」

 「え、そうだったんですか。自分で衣装作っちゃうなんてすごいじゃないですか」

 「そ、そんなことないよ。結局、実行委員の仕事が忙しかったってことにして
 やめちゃったんだ……」

 「なんでまた」

 「実際、実行委員の仕事は結構忙しかったんだけど、その…… は、恥ずかしいじゃ
 ない」

 「恥ずかしいものなんですか? コンテストを知らないから、どのくらい恥ずかしい
 のかはわからないですけど」

 「ああ、ごめん。サンタコンテストは各自がミスサンタに相応しいサンタの衣装を
 着ることになっていて、はるかと相談しながら作ったんだけど……」

 「ええ」

 「いざできあがって、それを着てステージに立つことを想像したら……ね」

 「(ど、どれだけきわどい衣装だったんだろう……)それは、残念です」

 「今年も、途中まで衣装を作ってやめちゃった」

 「なんだかもったいない気がしますね」

 「そうかな?」

 「ええ。あ、でも……」

 「どうしたの?」

 「いえ、ファンとしてはステージに立つ塚原先輩が見てみたいけど、その、サンタ
 衣装を着た塚原先輩をみんなに見せるのはちょっとくやしいなって。僕だけの先輩じゃ
 なくなる気がして……」

 「(ぎゅっ)ふふ、大丈夫だよ。私はサンタコンテストには出ないから。あれに出たら
 君と一緒に見て回るどころじゃなくなるしね」

 「あ、でも、塚原先輩のサンタ衣装姿が見れないのはちょっと残念かも……」

 「今一瞬、なにを想像したのかな?」

 「あ、いえ、その……」


 塚原先輩と創設祭を一緒に見て回る約束をした。
 二人きりのデート……と思っていたから、ちょっと残念だけど、
 でも、塚原先輩のことを考えたら、これでよかったのだと思う。
 楽しみだな。創設祭。




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