アマガミ 響先輩SS 「季節外れな行き先」


 「だーれだ」

 「(わ、誰かに目隠しされたぞ。この声は……)」

 「わかりますよ。塚原先輩でしょ?」

 「え? ふふ、ずいぶん簡単にばれちゃったな」

 「ふふふ、ファン第一号は伊達じゃないですよ」

 「くす、そうだね」

 「でも、いきなりでびっくりしました」

 「うん、橘君が前を歩いているのを見かけたから、ちょっといたずらしてみたく
 なってね」

 「塚原先輩も、こう言ういたずらするんですね」

 「このくらいはするよ。ちょうど周りに人もいなかったしね」

 「そう言えば、前に七咲にも同じことされて、間違えたらすごく怒られました」

 「そりゃあ普通は怒るわよ」

 「じゃあ、今のを僕が間違えていたら?」

 「ふふ。ファン失格って言おうと思ってた」

 「よ、よかった正解して」

 「くす。あ、そうそう、親からこんなクーポン券をもらったんだけど、一緒に行って
 みない?」

 「何のクーポンですか? ……ああ、あれですか」

 「そう。ちょっと季節外れかなって思うけど、あそこは年中無休で季節を問わないから。
 行ったことある?」

 「実はないんです。できたばかりの時はすごく混んでるって話だったから、しばらく
 してから……って思って、結局まだ行ってないです」

 「そっか。私も初めてなんだ。それじゃちょうどよかったね」

 「そうですね。あ、でもいいんですか?」

 「なにが?」

 「森島先輩じゃなくて、僕で」

 「うん、行くなら君とがいいな……って思ったから持ってきたんだ」

 「そう言うことならぜひ」

 「よかった」

 「それじゃ、いつ行きましょうか?」

 「そうだね……」

 ……

 「ところで塚原先輩」

 「なに?」

 「こう言うところだと、いつも使っているのとは別のになりますよね?」

 「そうだね。私は別のにするつもりだけど…… ふふ、君はいつも使っているので
 いいかもね」

 「それじゃあ、楽しみにしてますね」

 「え?」

 「普段とは違う塚原先輩が見られるってことですよね?」

 「え、あ、そ、そうだ……ね」

 「楽しみだな。塚原先輩、どんなのにするんだろう」

 「う……」

 「あれ? 塚原先輩、どうしたんですか?」

 「ど、どれにしようかな、なんて思ってね」

 「へえ、選べるくらいあるんですか?」

 「そりゃあ、はるかの付き合いで毎年毎年新しいのを買えば……ね」

 「ああ、なるほど」

 「でもな……」

 「どうしたんです?」

 「君の好きそうなのがないんだよね」

 「ぼ、僕の好きそうなのって、どんなのですか?」

 「えっとね…… 恥ずかしさのあまり思わず両手で顔を隠したくなるような……かな」

 「え!? どこからそんな情報を……」

 「うん…… まあ、色々。はるかとか七咲とか美也ちゃんとか」

 「ま、まさか美也までもが塚原先輩の手中に落ちていたとは……」

 「くす、大げさだね。あ、でも決定的だったのは、この前の遊園地かな」

 「え!」

 「ほら、ファラオの呪いの時に写真集に変わっちゃったでしょ? あの時見た写真集の
 モデルの水着、相当きわどかったよね」

 「塚原先輩、もしかして記憶力いいほうですか?」

 「うん、結構いい方かな」

 「はぁ……」

 「ごめんね。私、ああ言う派手できわどい水着は持ってないんだよね」

 「いえいえいえ、普通のを着てもらえればそれでいいですから」

 「そう? 君のことだから、きっとあんな水着を期待しているんじゃないかなって、
 ちょっと心配していたんだけど」

 「そんなことないです。それにレジャーランドの温水プールであんな格好していたら、
 大変なことになりますよ」

 「そう、それなら一安心」

 「ふう」

 「あ、でも、楽しみにしてるのはホントだよ」

 「ええ。僕も楽しみです」

 「結構広いみたいだね。色々なプールがあるって言う話だよ」

 「市民プールよりすごそうですね」

 「ふふ、そうだろうね。あ、ウォータースライダーもあるって」

 「そ、それ、高いところから滑るんですよね?」

 「あ、大丈夫。一緒に滑ろうなんて言わないから」

 「ふう、安心しました。あ、でも」

 「でも?」

 「この間のように、塚原先輩が後ろから抱きしめて一緒に滑ってくれたら大丈夫かも
 しれません」

 「くす、すぐそう言う話に持っていこうとするんだから」


 塚原先輩と一緒に、温水プールに行く約束をした。
 競泳水着じゃない塚原先輩の水着姿が見れる…… どんな水着を着てくるのだろう。
 でも、あの写真集の中身を覚えられていたと言うことは、期待薄かな……。



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