アマガミ 響先輩SS 「二つの想い」


 「練習メニューはこれでよし、と」

 「うーん、そろそろ新メンバーだけでやっていけるようにならないとまずいな」

 「来年は七咲がいるからその辺は大丈夫として、これから1年間を2年生に引っ張って
 いってもらわないと……」

 「2年生か…… そう言えば橘君も2年生だったな」

 「ふふ、彼、最初のうちははるかに憧れるその辺の男の子だと思っていたけど」

 「まさかこんなに仲良くなるなんて、思ってもみなかった」

 「はるかがちょっかいだすわけだよね。軽いように見えて言うべきことはちゃんと
 言うし、秘密はしっかりと守るし、ちょっと頼りなさそうに見えるのは、後輩だから
 割り引くとして……」

 「私のことをあれだけちゃんと見てくれている人は……ふふ、男子では彼がはじめてか」

 「不思議だな。ついこの間までは顔さえ知らなかった後輩のことが、今こんなに気に
 なるなんて」

 「彼、今ごろどうしてるかな。七咲の話だと夜はゲーム三昧だって言うから、
 ふふ、今ごろゲームでもしてるのかな」

 「あ、でも、はるかはともかくとして、七咲に悪いことをしているかもしれないな」

 「あの子、ずいぶん彼に懐いていたから、この間の帰りの件は結構ショックだったかも
 しれない」

 「うーん、どうやってフォローしよう。七咲はしっかりした子だけど、ちょっと脆い
 ところがあるから……」

 「付き合っていないから大丈夫よ、は確かにそうだけど、でも彼のことが気になって
 いるのは事実だし、だからと言って七咲に嘘をつくのはもっとまずいよね」

 「あそうだ、明日彼にその話をしてみようかな。彼ならなんて言うだろう」

 「困った顔して悩んじゃうか。それとも彼なりのアイデアを出してくれるか……」

 「ふふ、とにかく明日も会えるといいな」



 「はあ、まさか塚原先輩と橘先輩があんな関係だったなんて……」

 「塚原先輩は”付き合っているわけじゃない”って言っていたけど、手をつないで
 いたのはつないでいるように見えただけだ、と言うけど……」

 「でも、最近の塚原先輩と橘先輩の雰囲気は、先輩と後輩を超えているような気がする。
 少なくとも、塚原先輩は橘先輩のことをずいぶん気に入っているみたい」

 「私はどうしたらいいんだろう。尊敬する塚原先輩の恋のお手伝いをするのは構わない。
 むしろ塚原先輩に相応しい彼ができるのはいいことだと思う」

 「思うのだけど、その相手がよりによって橘先輩だなんて……」

 「なんだろう、このもやもやした気持ちは。なんだかちょっと寂しいようなそんな感じ」

 「大好きなお兄ちゃんが彼女を連れてきて、その彼女が自分と仲のいい知り合いだった
 ……そんな感じかな」

 「お兄ちゃん、か……」

 「そうかもしれないな。私にはお兄ちゃんはいないけど、もしかしたら私は橘先輩を
 友達みたいなお兄ちゃんと思っていたのかもしれない」

 「その仲のいいお兄ちゃんをとられてしまう。そんな気持ちなのかもしれない」

 「だとしたら、私はどうすればいいんだろう……」

 「……」

 「…………」

 「………………」

 「はあ、悩んだところで行き着く答えは一つ」

 「私は先輩をお兄ちゃんのように思っている、と言うこと。だから……」

 「だから、今まで通りでいい。今までと同じように接すればいい。特に意識することは
 ない」

 「でも、それを塚原先輩はどう思うだろう……」



アマガミSSのページへ戻る