アマガミ 響先輩SS 「新たな一面」


 「それでね。上目遣いにこっちを見る仕草がすごくかわいいのよ」

 「確かにそうね。ふふ、はるかはああ言うのに弱いでしょ?」

 「もうメロメロね。そのまま家に持って帰ろうかと思ったわ」

 「ホントに持って帰っちゃダメだよ」

 「そんなことしないわよ」

 「はるかならやりかねないなあ」



 「(森島先輩と塚原先輩、相変わらず仲がいいなあ。声をかけようかと思ったけど
 どうしよう?)」 

 「あ、せんぱーい」

 「ああ、七咲」

 「ふふ、どうしたんですか? こんなところでぼーっとして」

 「え、ぼーっとしてた?」

 「ええ。ぼけーっとあらぬ方を見ているように見えましたよ」

 「え、そ、そんな変な感じだった?」

 「ちょっとした変質者レベルですね」

 「いくらなんでもそれはひどいなあ」

 「それでなにを見ていたんです? ……あ、森島先輩と塚原先輩だ」

 「うん、二人を見つけたから声をかけてみようかと思って」

 「そうなんですか。確かに二人とも楽しそうに話をしてますよね」

 「うん。それでちょっと声をかけそびれちゃってね」

 「あ、そうそう、先輩知ってますか。塚原先輩って意外と可愛いんですよ」

 「え?」

 「特にこうやって二人で楽しそうに話しているときは」

 「そうなんだ。じゃあ、このままここで見ていてみようか」

 「はい。そうしましょう」



 「そう言えばあのダブルブッキング以来、ラブレターの数が落ち着いたみたいね」

 「うん、あんなのが続いたらどうしようかと思ったけど、なんとかなるもんね」

 「でも、本当に良かったの? あの時も言ったけど、高校時代に一度も付き合わない
 のももったいないと思うけど」

 「い、いいのよ。なんて言うかこう、私の心にずきゅーんと響く人がいないのよ」

 「ふーん」

 「な、なに、その意味ありげな視線は」

 「ううん、別に」

 「そう言うひびきはどうなの。こう、この人でなくちゃダメ! みたいな人いないの?」

 「わ、私はいいのよ、別に……」

 「よくないと思うなあ。私に”付き合ってみれば?”なんて言う前に自分をどうにか
 しなくちゃ」

 「う、そ、それはそうだけど。そもそもはるかと違って私は男子にもてるとかそう言う
 タイプじゃないし」

 「もてるとかもてないじゃないわよ。自分がどうか、でしょ? 興味あるなあ。
 ひびきってどう言う子がタイプなんだろう」

 「それはいいじゃない」

 「よくないわよ。親友として、男の子にめろめろになるひびきって言うのも見てみたい
 気がするなあ」

 「……あー、今日はいい天気ね」

 「夕方から雨だって」

 「あ、そうなんだ。はるか、ちゃんと傘持ってきた?」

 「降る前に帰ればいいんでしょ? だから持ってない」

 「はぁ、やっぱり」

 「そんなことより、ひびきの気になる男の子を教えなさいよ。私の知ってる人なら仲を
 取り持ってあげるわよ」

 「もう…… 自分のことくらい自分でなんとかするわよ」

 「え? 声がちっちゃくて良く聞こえなかったけど」

 「次の授業が始まるから教室に戻るよ」

 「はいはい」



 「へー、あの塚原先輩が防戦一方だなんて」

 「ふふ、塚原先輩は自分の恋愛関係は苦手なんです。それに攻め込まれたときの塚原
 先輩の仕草、結構可愛いと思いませんか?」

 「そうだね。あのなにが来ても動じないイメージのある塚原先輩の意外な一面だね」

 「ああ言う部分があるから、私は塚原先輩が好きなんです。本当に完璧な人だったら
 息がつけなくて今ごろこんなに塚原先輩と親しくなっていなかったかもしれません」

 「なるほどね。森島先輩と塚原先輩が仲がいいのも、そう言う理由なんだろうな」

 「そうですね。あ、ちなみに塚原先輩は可愛い小物が好きなんです」

 「へー。それは見かけによらず、って言っちゃっていいのかな」

 「クスッ、塚原先輩には直接は言えませんけどね」

 「それじゃ僕たちも戻ろうか」

 「はい」


 七咲のお陰で塚原先輩の新たな一面を見ることができた。
 見かけによらない一面をいくつも持っている塚原先輩。
 でもお陰で塚原先輩に今まで以上に親しみが湧いた気がする。



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