Chapter 01
◆はじめに

9年間生活した英国というのは正直なところ、愛憎半ばする対象というか、離れる時には英国の悪い点ばかりに自分の神経の焦点がむいてしまい、日本に帰国してからというもの英国をことさらに避けていたように思います。実際のところいつかはまた戻るであろうとは思っていたのですが、ただ観光でふらりと戻る気にはなれず、妙に構えてしまって、再訪するのに5年という歳月がいたずらに流れてしまいました。フランスに対しては、高校時代の親友がフランス人で、休みの時や大学に入ってからも何か行き詰ったりすると、ドーバー海峡を越えてフランスの友人の家に転がり込み、憂さ晴らしをしたこともあったので、ある意味無責任な愛着と憧憬の念ばかりが募っていました。どっちにしても両国ともに自分にとっては観光で行くというのは、なかなか気分的に受け入れられない気がしたのです。まるで、観光で再訪するということによって、もう二度とかの地を生活者として訪れることができなくなるのを恐れるかのように。 

今回旅立ちを決定させたのは、親友の友人である Pierre de la Rochefeucauld 伯爵の結婚式に招かれたからです。こういったイベントが舞い込んだことにより、なかなか決心がつかなかったヨーロッパ再訪を決心することができました。丁度帰国してからの5年間に築いてきたものがひとつの区切りを迎え、新たな人生の設計を開始しようとしていた矢先でもあったので、この旅によって、自分がそれ以前に培ってきたものが何であったのか見直して、考えを整理するいいチャンスであると思いました。


◆パリへ・・・

まず、結婚式に参列する為に、東京からパリへの直行便、エールフランスにてパリを目指しました。もう何度も欧州便には乗っておりますが、パリへ直接入ったことはなく、エールフランスの長距離便を利用したことが無かったので、非常に興味がありました。今回はちょっと贅沢にビジネスクラスを利用したのですが、さすがにエールフランスだけあって食事とワインの内容は機内食にしては凝ったものでした。前菜はフォアグラのサラダを選ぶことができ、それに合わせてワインは軽いブルゴーニュを選びました。この便でサーブされた赤のブルゴーニュは Chassagne-Montrachet の物で非常に軽快な香りが爽やかでついつい飲みすぎてしまいました。機内の小さなテーブルにもちゃんとクロスをかけてオードブルからサーブするのはやはりフランスらしいな〜と思いましたが、正直食事中身動きが取れなくなってしまうので、合理性という点ではちょっとやりすぎかと思いました。

昔学生時代に行き来していた時は長く感じられた機中の旅も、ゆったりとしたシートやワインのおかげですぐに到着したような気がいたします。到着したパリはあいにくの雨模様・・・というよりも、ひどい土砂降りで、間違えて飛行機はロンドンに到着したのではないかと思うほどでした。そのままタクシーに乗って市中へ向かったのですが、大変な渋滞に巻き込まれてしまいました。うわさではパリの道路事情のひどさについては耳にしておりましたが、ここまでひどいものであるとは思ってもいませんでした。ただ、友人がパリに着いたときは途中で完全に車が動かなくなってしまい、無理やり運転手に下ろされたという話をききましたが、今回はそんなことも無く無事にホテルに到着しました。ホテルについてびっくりしたのは、まずチェックインの時にメッセージがあると伝えられ、見てみると、友人が空港まで迎えに来たけれども途中で渋滞に巻き込まれて身動きが取れなくなり、仕方なく引き返すからホテルで会いましょうとのこと・・・。迎えに来ていることはおろか、メールで伝えていたのにも関わらず、パリにいるのかいないのかも返事が無くて分からなかったので苦笑してしまいました。もし迎えに来ているならば、空港で待っていたのですが、ね。