
Collection No.201 オパール カフリンクス
c.1900〜1910 フランス製
19世紀末から20世紀の初頭にかけて、プリカジュールエナメルの幻想的な雰囲気が世紀末の嗜好に合ったように、この作品に使われているオパールという素材も、世紀末と呼ばれる時代に非常に愛好された宝石でした。その幻惑的な色合いからも、耽美的な時代の雰囲気を良く伝えていますが、オニキスの台に収められたシンプルなデザインが、いっそうこの繊細な石の魅力を引き出しております。オパールの繊細さについて世紀末の傑作 『さかしま』 を書いたユイスマンスは、『オパールは全くリューマチ性の感受性を持っていて、その光輝は湿度、熱、あるいは冷気によってさまざまに変化する』と書いていますが、非常に柔らかい石でもあるために扱いの意外と難しい宝石なのですが、この作品では薄いディスク状にカッティングしてオニキスの台にはめ込むという非常に難しく、現代の技術ではおおよそ不可能な技法で作られております。繊細な石をいっそうもろくしてしまう作りですが、強度を考えてこの作品を作った職人は、透明なサファイアか水晶を同じく薄いディスク状に切り出して、オパールの表面のコーティングに使用しております。その緻密な設計は非常に難しいもので、寸部の狂いも無く全てのパーツが組み合わされてホワイトゴールドの留め金によって結合されている職人芸に感嘆いたします。
まだこの時代は銀色の装飾用金属は銀かホワイトゴールドが主流で、プラチナはこの後の時代に主流になってきました。ホワイトゴールドは殊にフランスで愛用され、ここでは艶やかなオパールの魅力を生かすためにあえてゴールドではなくホワイトゴールドを使った職人の粋な感性が伝わってきます。ホワイトゴールドの留め金具はあえてシンプルに六角形の台を中央に形作り、そこにダイヤモンドをあしらうことでいっそうストイックなシャープさを見せております。この時代、ダイヤモンドをいっそう魅力的に見せるために、ダイヤモンドの台はミル打ちという技法を使うのですが、ここではミルを打たずにシンプルさを強調した台であることが、非常にモダンな印象を受けます。
オパールの質も非常に素晴らしく、桃色の強い石を選んでおりますが、オパールの価値や美的な価値基準というのはこの桃色で決まるのですが、この作品に使われている石は非常に桃色が美しく、それをあえて薄いディスク状にカットさせた当時の耽美を愛する贅沢さがしのばれます。

fig1.
表面のディテール