Collection No.06 エナメル 真珠 ハート型 カフリンクス c1890 イギリス
 


非常にヴィクトリア朝らしいロマンチックなカフスボタンです。

ハート型のカフスボタンは結婚記念などの時に作られたりと、非常に人気の高かったモチーフで、ベルギーの王族が作った18金にルビーをあしらったものなどが有名です。この作品は丁寧に手彫りされたギョッシェ彫りの上から発色の良い赤の透明エナメルをかけた美しい作品です。エナメルにもその国や時代の趣味が現れるように、淡い色が好まれたエドワード朝とは対照的に、ヴィクトリア朝はボルドーやロイヤルブルーなどのしっかりとした荘重な色味が好まれました。ヴィクトリア時代のカフスボタンというのは概して大き目の物が多いのに対して、これは小ぶりで13ミリ程度のかわいらしい大きさです。この時代のハート型カフスが平坦なゴールドの板をハート型にくりぬいただけのものが多いのに対して、この作品は立体的に作られており、ふっくらとしたやさしい感じが印象的です。中央部には半分にカットされた小粒の天然真珠が収められており、あえてダイアモンドではなく柔らかな光を放つ真珠を持ってきているところが好もしく全体的にロマンチックな雰囲気をいっそう高めていると思います。赤いエナメルの縁も丁寧に彫金が施されており、その外側には白の不透明エナメルのボーダーが配され、デザイン的に引き締めております。

このようなロマンチックなカフスボタンを所有していたのはどんな男性だったのでしょうか?奥様への愛情にあふれた紳士であったのだろうか、それとも結婚記念に夫人からプレゼントされた物なのだろうか・・・。まるでヴィクトリア時代の繊細な恋愛小説を読むような空想に浸らせてくれる、カフスボタンです。

fig1. 表面のディテール