Collection No.1  モスアゲート カフリンクス
 c.1870〜1890 ロシア製
モスアゲートとは苔メノウと日本名をいいますが、乳白色の石英に二酸化マンガンなどの内包物が入った石のことをいいます。主にインドのデカン高原やシベリアで産出します。このカフスボタンに使われているような風景のように見える良質な石は Picture Stone とか Landscape Agate などと呼ばれ、珍重されています。

ロシアでは19世紀末にファベルジェなどの有名な宝飾デザイナーが愛用し、小箱やブローチなどに使用していました。このカフスボタンは幸か不幸かファベルジェのサインが無いので私のようなコレクターの手元に来てくれましたが、もし刻印やサインがあったとすればそれこそ美術館行きになってもおかしくないような美しい作品です。

写真ではなかなか伝わらないのですが、モスアゲート自体も乳白、オレンジがかった淡い桃色、くすんだグレーの微妙に混ざった色をしており、まるでシベリアの冬の空を閉じ込めたかのような色をしております。内包物は冬枯れした白樺の枝振りのような表情を持っており、北国の遅い明け方の空のような雰囲気が漂ってきます。

周囲を取り囲むダイヤモンドはローズカットダイアモンドで、ブリリアントカットのようなテーブルがないせいか、煌きは激しく、光に反射するとダイアモンドダストのような、輝き方をします。石の留め方はファベルジェによく見られる爪をしっかりと見せたセッティングを採用しております。

裏側も手抜きされずに、非常に立体的に作り上げられており、サインこそ無いもののファベルジェクラスの一級品の風格が感じられます。

冬にこのようなカフスボタンをしてチャイコフスキーのバレエでも見に行きたいと思うような、そんなカフスボタンです。




        

fig1. 表面のディテール

fig2. 裏面のディテール


fig3. 石のセッティング